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【掌編小説】「どこかへ旅をする。」Vol.5|私に還る、小さな時間 (長野県諏訪湖)

Il y a autant de raisons et de styles de voyager qu’il y a de gens. Cela peut être particulièrement vrai pour les voyageurs en solo.
Une série de romans sur la paume de la main qui dépeignent des fragments d’un tel voyage est « Traveling Somewhere ».
今回の主人公は、母として妻として家族を持ちながらも、"ひとりの自分"を確かめるために旅に出かける。ふとしたきっかけで、心の奥にしまい込んでいた想いと向き合います。(写真:諏訪湖)

諏訪湖

バスタ新宿発、長野県諏訪行き。
高速バスは外国人旅行者で賑わっている中、日本人はぽつんぽつんと乗車していた。

 

iPhoneにはモバイル乗車券のスクリーンショットが保存されている。目的地の天気は晴れの予報だが、朝の新宿は弱い雨が降っていた。

 

諏訪湖を見てみたい。そう思ったきっかけはずいぶん昔、まだ娘が小さい頃に見ていたテレビ番組の特集だった。山間の盆地にある豊かで美しい湖。

 

バスの窓ガラスを伝う雨を見ながらぼんやりする。
今までずっと、母でもなく妻でもなく「私」としてどこかに行きたいと痛烈に思っていた。

 

でも、それはなかなか言い出せないことだった。私のわがままを家族がわかってくれないのではない。「母」としての私が、個人としての「私」のわがままを許さないのだ。そこにあるのは小さな虚しさ。見て見ぬふりはいつまでも続いている。

 

数日前、お風呂から出てきた娘に何の気なしにそんな話をしたことで事が動き出した。

 

彼女はまだ中学1年生だ。こういう概念的な話はギリギリわからないだろうと甘くみていたのに、返ってきたのは「それって多分、お母さんにとってはすごく必要で、すごく大事なことだと思うよ」だった。「いいじゃん。お父さんは私が説得するし、どこか行きたいところに行きなよ」と笑う。

 

いつの間に、この子はこんなに大人になったのだろうと思った。この間まであんなに小さかったのに。世の中でよく言う「子供は親の心配をよそに逞しく育つ」というのは本当なのだ。親が思っているよりもどんどん早く、どんどん強く、どんどん逞しく育っていく。

 

上諏訪駅には正午過ぎに到着した。
バスを降りてまず感じたのは空の近さだった。標高が高いからか、東京で見るよりもぐっと雲が近い。駅から少し先の地下道で線路を超える。

 

初めて見る諏訪湖は思っていたよりもずっと大きかった。涼しい風が湖面をすべるように吹く。青々と水をたたえ、静かにこの地を見守りつづける存在が、私の抱える虚しさなど瑣末なことであると言っているようだった。

 

「ほんとうにそうね」

 

ひとり呟いて写真を撮り、家族のグループLINEに貼り付ける。
すぐに既読がついて、夫と娘から「綺麗!」「いいな」とメッセージが飛んでくる。思わず笑ってしまう。

 

たとえ母でも妻でもないただの「私」としてどこかへ行ったとしても、日常から離れたとしても、大事な存在が大事であることにかわりはないのだ。

 

ずっと心の中にあった虚しさはいつの間にか消えていた。

 

今日は沢山写真を撮って帰ろう。きっと2人とも面白がって話を聞いてくれるだろう。大きく深呼吸をして、私はゆっくりと歩き出した。

旅の舞台「諏訪湖」について

掌編小説 諏訪湖
立石公園から望む諏訪湖(写真提供:諏訪市)

諏訪湖(すわこ)は、長野県のほぼ中央に位置する諏訪盆地に横たわります。岡谷市、下諏訪町、諏訪市にまたがり、湖の周囲は約16km。長野県で一番大きな湖です。その周辺には美術館や温泉、神社など、観光スポットが点在しています。

夏の夜、湖上を照らす3つの花火大会

掌編小説 諏訪湖サマーナイト
諏訪湖祭(写真提供:諏訪市)

これから迎える夏から初秋にかけて、夜の諏訪湖は「信州 諏訪湖花火」として開催される3つの花火大会で、華やかに彩られます。それぞれ異なる主催者ながら、地域の連携によって、諏訪湖の魅力を発信しています。

 

まず、7月25日(金)~8月24日(日)までは、「諏訪湖サマーナイト花火」が毎晩開催。その間の8月15日(金)には、今夏で第77回を数える「諏訪湖祭湖上花火大会」が予定。大迫力の水上スターマインや全長2km超のナイアガラなど、諏訪湖を代表する一夜です。さらに、9月6日(火)〜10日(土)には全国の若手花火師による競演「国新作花火チャレンジカップ」が開催され、新たな花火文化の創造が湖上で繰り広げられます。

 

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